ゴアの裏地がボロボロ!加水分解とは 編【元山用品店スタッフのゴアテックス講座vol.3】

大事にしてたはずなのに。。。

久しぶりに防水ジャケットを着ようと思ったら

裏地ボロボロやないかーい!(;o;)

そんな悲しい経験をされたことはないでしょうか。

私もアウトドア用品店で働いていた頃、ゴアテックスに限らず、各メーカーの出している防水ジャケットや、バックパックなどの裏地がボロボロになったという話はよく聞きました。

というか、私自身も何度か同じ経験をしたことがあります。

防水ジャケットは決して安くないものだし、お気に入りならできるだけ長く着たいですよね。

今日はなぜそんなことが起こるのか、理由や対策についてのお話です。

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全ては水分のせい

さて、さっそく大事なジャケットをボロボロにした犯人をお伝えします。

その正体は…

水!

雨だけではなく、空気中に含まれている水分からなにから全部です!

どこにでもいる強敵。

正直避けることは不可、不可避ってやですΣ(・□・;)

ではなぜ水によって防水ジャケットがボロボロになるのでしょうか?

スニーカー好きに有名な言葉「加水分解」

引用元:靴修理の直行便

話が少しそれますが、スニーカー収集家たちを悩ませるネックな出来事に「加水分解」という現象があります。

加水分解とはざっくり言うと

水によって化合物が分解される化学反応です。

スニーカーの靴底部分はウレタン素材でできているものが多いのですが、このウレタンという化合物は加水分解を起こしやすい素材の代表格

2、3年使用するのには何も問題ありませんが、長年収納しているものや、コレクション目的などで長期間にわたって保管している靴は、たとえ何もしていなくてもウレタンが空気中の水分と反応して分解されていくのでどんどんボロボロになります。

久しぶりに履いたスニーカーのかかとが崩れたり、いきなりパカっと靴底が剥がれたという話聞いたことありませんか?

それは加水分解が原因なんです。

どれだけ大事にしててもダメになる、コレクターにとってこんなに悲しいことはありませんよね。チキショー(;o;)

実はウレタンが使われまくっている防水ジャケット

防水ジャケットの話に戻ります。

スニーカーと防水ジャケット、一見まったく違う素材でできてそうなこの2つなんですが、実はどちらもウレタンがたくさん使われています。Σ(・□・;)

シームテープの部分だけのものもあれば、防水素材のフィルムそのものがウレタンでできているものなど差がありますが、多かれ少なかれ使われている場合がほとんどです。

そして、ウレタンが使われているということは、防水ジャケットにも加水分解が起こるということです。

そう、裏地ボロボロ事件の原因は加水分解だったんです!

ジャケットの加水分解は保存の仕方が悪ければ購入から2年ほどで目に見えるまでボロボロに進むこともあります。

恐ろしや!(;o;)

加水分解を阻止するために出来ることは?

最初に悲しい事実をひとつ。

加水分解は誰にも止められません!!

ガーーーン( ;∀;)

止められるなら、スニーカー収集家たちは悩まないですもんね^^;

なので私からお伝えできることは、どうすれば加水分解の進行をゆっくりにできるのかということになります。

また防水ジャケットを購入する時にちょろっと頭に入れておくといいポイントもお伝えしますね。

コツその1・湿度の高い部屋はNG!

防水ジャケットを長持ちさせるために1番大切なこと、それは「いかに高温多湿を避け風通しの良い場所に置いておくことができるか」です。

空気のじめっとした場所は、防水素材やシームテープに使われている糊にとって最悪の環境です。

できるだけそういった場所での保管は避けましょう。

湿度が高かったり、雨が多い地域であれば、収納場所に除湿剤を使うなどして湿気を取る工夫をしてください。

コツその2・畳んでタンスに収納もアウト

畳んでタンスに収納することも、防水素材にとってはあまり好ましい保存の仕方ではありません。

空気が滞る場所があまりよくない上、シームテープは折りたたんで圧がかかった状態になるとはがれやすくなります。

また防水ジッパーも折れ目がつくことで隙間ができ、浸水しやすくなってしまいます。

できるだけハンガーにかけて収納しましょう。

写真は私のずぼら管理によって早々とはがれ始めたシームです(涙)

ポイント3・汚れは放置せず洗うこと

防水素材に汚れがついたまま保管すると、そこに残っている水分や雑菌によって生地の痛みが早くなってしまうことがあります。

また、ゴアを始め防水透湿素材は、目には見えない小さな穴より蒸気を外に逃がすことでジャケット内部が結露しないようにようにできています。

しかし汚れがついたままになってしまうとその穴が塞がれてしまい、蒸気を外に逃がせなくなるためジャケット内部に湿気がこもって結露しやすくなります

結露は汗冷えの原因にも、加水分解の原因にもなる厄介なものです。

明らかに泥などで汚れている時はもちろんのこと、たくさん汗をかいた後も意外とジャケットは汚れているものなので、ぜひめんどくさがらずに洗ってくださいね。

ゴアテックスの仕組みについてや、お手入れ方法はこちらをごらんください

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ポイント4・直射日光は極力避ける

山登りやランニングなど、防水素材はアウトドアで使用するものなので太陽を避けるなんてことは不可能です。

しかし過度な紫外線は生地を消耗させる大きな原因となります。

ウェアを洗った後などは、炎天下に晒して干すのではなく必ず陰干しするように気をつけましょう。

また屋内でも直射日光の当たらない場所で保管してください。

ポイント5・購入の際なにでできた防水素材を使ってるか尋ねる

ここからは購入の際のポイントになります。

防水透湿素材と一口に言っても、その種類は様々です。

ゴア社の「Gore-Tex」パタゴニアのH2No、ノースフェイスのハイベントなどあげ出せばきりがありません。

あなたがもし加水分解によるボロボロ劣化を少しでも避けたいのであれば、ウレタン系フィルムを使用した防水ジャケットは選ばないほうがいいです。

特にストレッチ性や、安さを売りにしているような防水素材の多くはウレタンが多用されているので、素材に詳しそうな店員さんに尋ねてみましょう。(あくまでも目安です)

ちなみにゴアテックスが長持ちすると言われている理由は、防水素材がフッ素系樹脂(PTFE)を加工したものでできているためです。

このPTFEは非常に安定した劣化しづらい素材なので、ポロポロと分解して崩れる心配はありません。

とはいえシームテープや一部の裏地にはウレタン使われていたりするので、一生ものとは言えませんが、少なくともウレタンフィルム系の防水素材を選ぶよりはお手入れ次第で長く愛用できるはずです。

ポイント5・3レイヤータイプを選ぶ

多くの防水ジャケットは、レイヤータイプを分けて考えることができます。

ここで言うレイヤータイプとは、何層でできた生地を使用して防水ジャケットが作られているのかということで

3レイヤーは

表地+防水フィルム+裏地

2.5レイヤーは

表地+防水フィルム+樹脂

2レイヤーは

表地+防水フィルム+分離したメッシュ生地

といった構造になっているのが基本です。

全てを説明すると長くなりすぎるので割愛しますが、この中で1番耐久性が高いのは3レイヤータイプです。

表地と裏地で防水素材を挟み込みラミネートしてしまうことで、強く透湿性のいい生地に仕上がっています。

2レイヤーと比べて少し値段は上がりますが、そのぶん長く愛用できるはずです。

こんな見た目の防水素材は2.5レイヤーと呼ばれるタイプの裏面。

表地と防水素材が貼り合わされた生地に、肌への張り付きを防ぐためのプリントが蜂の巣状に施されています。

こっちが3レイヤータイプの裏面。

防水素材を完全に覆い尽くす裏地がラミネートされています。

次世代素材を選ぶ

登山用品の進化のスピードはすごいです。

もちろん防水素材にも例外ではなく、各メーカーから様々な種類が登場しています。

その中には、悩みであった加水分解に注目したものや、そもそも別素材を使用して作っているものもあります。

買い替えをきっかけに、そういった素材を使用したものを選んでみるのもいいかもしれません。

いくつかご紹介します。

finetrack (ファイントラック)

もう登山用品のメーカーとしてすっかり定着したファイントラック。

今までの登山業界の常識を根本的に見直して独自に開発した商品には熱狂的なファンが多く集まります。

そのファイントラックの出す防水素材「EVER BREATH(エバーブレス)」は優れたストレッチ性が特徴です。

そのエバーブレスを使用した代表的なジャケットが エバーブレスフォトン

3レイヤータイプの3シーズン用(初夏秋)ハードシェルです。

同じウレタンでも、経年劣化が発生しにくい”ポリカーボネート系ポリウレタン”が使用されており、快適なストレッチ性を残しつつ、従来のウレタンの弱さを克服したジャケットに仕上がっています。

ゴアテックスのフッ素系樹脂は、強い反面伸縮性があまりないのが弱点です。

登山だけでなく、釣りやクライミングで使用するにはこのストレッチ性が強い味方になってくれるでしょう。

またスリムなデザインなのもかっこいいですね。

公式サイト:finetrack

eVent (イーベント) fabrics

イーベントファブリックスとはイギリスの会社が開発した素材の名称です。

この防水素材はゴアテックスと同様にフッ素系樹脂PTFEを使用しているので加水分解には強く作いですが、ウレタン系と比べると伸縮性は劣ります。

しかしゴアと大きく違う点があります。

それは防水素材自体に疎水性をもたせたことにより、肌への張り付きを防ぐための裏地を省くことができるようになったことです。(3レイヤータイプは裏地があります)

これによって、軽量化・透湿性・着心地の良さがアップしており、ゴアの弱点である硬い着心地を軽減することができるようになりました。

薄くコンパクトになるので、防水のスタッフサックにもよく使用されています。

ジャケットにはイギリスのアウトドアメーカーRabなどが採用していますが、少々高価です^^;

公式サイト:eVent fabrics

MOUNTAIN HARD WEAR (マウンテンハードウェア)

マウンテンハードウウェアはアウトドアの本場アメリカの登山メーカーです。

日本での愛用者も多く、ウェアだけでなくテントなどのギア系も出しています。

このマウンテンハードウェアの独自防水素材がDry.Q

その中でも耐久性が高く作られたDry.Qエリートは登山家に人気の高い素材です。

上記と同様PTFEを使用しているため加水分解の心配はなく、透湿性に優れています。

(噂ではeVentを使っているとか?)

着用した瞬間から始まると言われる、高い透湿性のおかげでベンチレーションを省くことが可能になったそうで、着心地もかなりよくなっています。

公式サイト:MOUNTAIN HARD WEAR

ウェアは消耗品

さて、ここまで色々と長持ちさせる方法や、長持ちしそうな素材についてお話ししてきましたが、最後に一つ。

アウトドアウェアは一生ものではなく消耗品です

アウトドア用品=丈夫というイメージからお手入れすればずっと使えると考えられている方も多いですが、どうしても使用すればするほど少しずつ性能は低下していきます。

高価なのに(;o;)

と思われるかもしれませんが、命を守る大切な役割を担うものなので開発費用や素材にかかるコストが普通の衣服と比べてかかるのであって、ずっと着られるから高価なわけではありません。

もし手入れしてるのにパフォーマンスが落ちたなと感じるようになれば、それは加水分解を起こしていなくても寿命かもしれません。

楽しいアウトドアでの事故を起こさないためにも、ウェアの状態は常にチェックしてあげてくださいね^^

それでは、また次回まで!

無国籍チャンネルでした。

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