山用品の撥水と防水の違いをイラストで解説するよ!そもそも撥水って必要なの?【元山用品店スタッフのうんちくvol.8】

こんにちは!

今日は山用品の「撥水と防水の違い」のお話です。

山用品の説明で頻繁に登場するこの2つの単語ですが、

皆さんこの2つって具体的にどう違うのと問われてすぐに答えられますか?

もし曖昧にこの言葉を捉えている場合、山用品選びの失敗につながってしまうこともあるので要注意Σ(-᷅_-᷄๑)!

間違って買い物をしてしまう前に、是非この記事をご一読ください。

それではスタート!

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撥水加工されてたら山でも大丈夫?

私が山用品店で働いていた時の話です。

お客様に商品素材の説明をしてる時に

「この生地は撥水加工されています」という話をすると

「じゃあ雨でも大丈夫なんですね」と解釈される方がよくいらっしゃいました。

確かにシャワー程度の少しの雨であれば撥水加工されたジャケットでも耐えられます。

しかし山用品店で、その程度の耐水性を「雨でも大丈夫」と口にはできません(・_・;

ザザ降りの雨だと大惨事もいいところ、下手したら命の危険もあるので

「天保山くらいの山なら(`・ω・´)」といつも伝えていました。

ちなみに天保山は大阪で一番低い、標高4.53mの築山です。笑

撥水と防水のしくみの違い

山じゃ撥水だと命の危険もある。

そう言われても、具体的な説明がなかったらイマイチピンと来ませんよね。

では撥水と防水の仕組みの違いについて、イラストとともに説明していきます。

撥水とは?

※黒い横線は生地だと思ってください。

撥水は生地の表面や糸にいろんな工夫(薬剤塗布・起毛させるなど)を施し

水が生地にしみこむ前にコロコロ滑って落ちるように加工した状態のことです。

買ったばっかりの布製の傘を想像していただければわかりやすいかと思います。

撥水加工ほやほやの生地は気持ちいいほど水を弾くので、

これカッパでも使えるんじゃね?!という気持ちを掻き立ててきますが

使ううちに薬剤が取れてきたり強い水圧がかかったりした場合、あっさり浸水してしまうので

街中のちょっとした移動くらいまでに留めておきましょう。

防水の仕組み

防水はその名の通り水を防ぐことをさします。

時計や化粧品など身近なものにもよく使われている言葉ですよね。

では山用品(ウェア関連やテント、寝袋など)でよく使われる防水とはどういう状態なのか?というと

当たり前ですが^^; 水が中に入らないように作ってる状態を指します。

撥水と違い薬剤塗布などで水を寄せ付けないのではなく、水を通さない力がある素材を加工して使う場合が多く(ビニールやゴアテックスメンブレンなど)

基本的に破れたり、加水分解を起こしたり、生地の耐水圧以上の水圧がかからない限りその効果が続きます

合わせてどうぞ

山用品のレインウェアの仕組み(ゴアテックスなど)

では具体的に山用品のレインウェアなど、防水ジャケットと呼ばれるものはどういった仕組みになっているのかというと

撥水+防水の合わせ技でできています!(特殊なものを除く)

ナイロンやポリエステルでできた布に撥水加工を施し、

裏にゴアテックスなどの防水素材を張り合わせ、

3層(もしくは裏地を含む4層)で1枚の生地に仕立てたものを使っているので

表面は水滴が滑り、強い水圧がかかっても中に水が浸透しない、合わせ技一本の最強快適レインウェアに仕上がってるんです!

防水加工だけでもいいんじゃないの?撥水の必要性

水滴が葉っぱの上を滑る仕組みと、起毛させて撥水させる仕組みは同じ!

では、防水素材使えば水が入らないなら、なぜわざわざ撥水させる必要があるのか?

ちょっと疑問が湧きますよね。

理由はいくつかあるのですが、最大の理由は

撥水させないと表面の生地には水がしみこむから。

さっきのイラストの、一番左の水滴くん。

入りこめん…と言いつつ黒い線(生地)まではなんとか到達してますよね。

基本的に防水素材は生地の裏側に貼られているので、表面は無防備なんです。

もし撥水加工を施さず防水素材だけを使ったレインウェアを着て雨に濡れると、中に浸水はしないにしても表面の部分は水を含むので見た目はびしょびしょになります。

そうなると

  • 身体が冷える
  • 透湿性が著しく低下するので内側が結露しやすくなる
  • 水を含んでウェアが重たくなる

という最悪な状態を招くことに(・_・;

どれも山では命につながる事故を招く要因なので防ぎたいところです。

また、撥水加工は汚れを落としやすくする効果もあります。

落ちにくい土汚れが多い山用品、汚れが落ちやすいなんて大助かりですよね。

撥水と防水は切り離せない関係だということがなんとなくおわかりいただけたでしょうか^^

補足、撥水加工は消耗品

高いジャケットも、お手頃ジャケットも、撥水加工は使用すればしただけ消耗していきます

最近水を弾かなくなったなーと感じたら、先ほどの「最悪な状態」を防ぐためにも早めに撥水スプレーや撥水加工できる薬剤を使用して水を弾く状態をキープしましょう。

スプレーは手洗いして汚れを落とした後に使用してください。

この時気をつけたいのが、防水ジャケットに使用できるものを選ぶこと。

よく見かける「傘用・靴用防水スプレー」などを使ってしまうと、生地表面に膜を作ってしまうので透湿性が損なわれ、ウェアの内側が結露するようになってしまいます((((;゚Д゚)))))))

防水素材の使われたウェアの手洗い方法はこちらをご覧ください

合わせてどうぞ

個人的には洗濯と同時に撥水加工もできる「ニクワックス」が、スプレーみたいに屋外に出る必要もないし簡単すぎてオススメです。
戻れなくなります。笑

山用品店で撥水だけのジャケットを売る理由

では雨を防げない撥水加工だけのジャケットを山用品店でなぜ販売しているのでしょうか?

その理由はそれぞれの特徴にあります。

防水素材を使ったジャケットは、長時間の雨にも耐えられるし、風も通しません。

表面に使われている生地も耐久性も高いものが多いです。

ただ先ほど山用品のレインウェアの仕組みの項目で少し触れたように、山で使う防水素材は何層かでできているので、撥水加工だけのものより生地に厚みがでます

レインウェアってガサガサするイメージないですか?その理由がこれです。

最近は柔らかく進化してきていますが、まだまだ撥水加工ジャケット代表のソフトシェルなどと比べてごわつくものが多い(・_・;

いろんな面で強いけど、強いが故のマイナスがちょっぴりあるんですね。

あと防水の方が基本お高いです。笑

変わって撥水加工だけのジャケットの場合、雨はほんの少ししか防げないものの、生地に厚みがないので着心地が柔らかく、軽くてコンパクトに収納できるものが多く作られています。

ハイキングや、登山中休憩時にサッと羽織るものとしては最高です。

また、蒸気の抜けるペースも早いので、トレイルランニングなど運動量の多いスポーツを楽しまれる方にももってこい!

街着としても気軽に着ることができます。

得意ジャンル、不得意ジャンルがあるので、使用用途によってうまく使い分けられるようにどちらも作られているってことですね。

どんな風に使いたいのかを考えて選ぼう!

さて、

今回は防水と撥水の違い、そしてそれぞれのジャケットの特徴を考えて山用品を選んだ方が失敗がないという話でしたが、参考になりましたでしょうか。

山用品はとても種類が多く、正直

「これいつ着るねんΣ(-᷅_-᷄๑)」と突っ込みたくなるアイテムもあったりします(汗)

安いものじゃないし、極力買い物に失敗しないコツ

例えば、夏の低山で休憩時さっと羽織れる軽いウィンドブレーカーが欲しい など

使うシチュエーションと欲しい機能をはっきりさせてからお店に行くことです。

とはいえ私はお店に行くと、目的決めてても目移りしまくっちゃうんですけどね。笑

それではまた次回まで!

最後までありがとうございました\(^o^)/