みなさまこんにちは。
突然ですが、山用品店って初心者には言葉のわからない海外みたいだと思いませんか?
専門用語だらけだし、日本語と英語とドイツ語が入り混じってるし、世代によって同じアイテムでも呼び名が全然違ったりするし。
何も知らずに飛び込むとわけがわからない世界です。
今日はそんな専門用語の中でも特によく質問された「ソフトシェル」についてのお話です。
スタート!
※結構長文です、目次をクリックするとその項目までジャンプするので、手っ取り早く読みたい方はご活用ください^^;
Contents
ソフトシェルとハードシェル
スタート!と言いながらいきなり違うものの話になりますが^^;
皆さんハードシェルはどういったものかご存知でしょうか?
ハードシェルとは身体を風や雨から守ってくれる、防水・防風・耐久性に優れた素材が使われたアウターの総称です。ゴアテックスを使ったジャケットなどのことですね。
ゴアテックスについてはこちら
→元山用品店スタッフのゴアテックス講座【Gore-Texとは・選び方・種類】編
ではソフトシェルとはなにか?
正直に答えますと、ソフトシェルという言葉は現在とても広義で使われており、ハードシェルほどはっきりとこういうものです!と言い切れないんです。
防水性があるかないかがソフトシェルとハードシェルの違いだという見解が一般的ですが、それだけで括るとかなりの種類がこのソフトシェルというジャンルに入ることになり、結果「これもソフトシェル、あれもソフトシェル、一体ソフトシェルってなんやー!!!」といったパニックを引き起こすきっかけを生んでしまうことになってます。
この三つは素材や厚みは違えど全てソフトシェルです。
うーむ…。
しかしものには必ず始まりがあるもの、ソフトシェルという言葉が生まれたきっかけを辿れば本来の意味は見えてくるはず。
ということで次項はその話です。
ソフトシェルという言葉のルーツ
ショーラーとマムートという名前は、登山をしていれば一度くらいは耳にしたことがあるのではないでしょうか。
ショーラーは1868年から続くスイスの老舗繊維会社で、その生地はアウトドアの世界でも広く使われています。
そしてMAMMUTはショーラーと同じくスイスにある登山用品の会社で(元はロープ会社)その歴史はさらに古く1862年から続いています。
なぜこの2会社の話を始めたのかというと、1986年にショーラーとMAMMUTとの共同開発によって、最初のソフトシェルパンツが生み出されたと言われているからです。
今まではウールパンツが主流だった登山業界で、この開発には世界中の登山家が飛びつき、ソフトシェルというものが大きく知れわたるきっかけになったそうです。
この話から考えると、今広い意味で使われている「ソフトシェル」という言葉は当初、ショーラーとマムートによって生み出されたソフトシェルを指すために使われていたということが推測できます。
すなわち、ソフトシェルという言葉はこのショーラーの作った生地、もしくは同等の特徴を兼ね備えた生地で作られたジャケットやパンツを指すのが、本来の言葉の意味に最も近いのではないのかなと思います(あくまで個人的な見解ですが^^;)
ショーラーとマムートについて詳しくはこちら
→Schoeller:Outdoor-Textiles (英語サイト)
そんなショーラーのソフトシェルの特徴は。
- 耐水性がある(シリーズによっては防水)
- ストレッチ性がある
- 透湿性が高い
- 耐摩耗性に優れる
- 速乾性に優れる
などなど。
昔一本持ってたのですが、めちゃくちゃはき心地が軽くて快適でした。もう一本欲しいなぁ…(でも高いなぁ…涙)
どちらかというとウインドブレーカーよりジャージに近い素材ですが、ジャージよりもっと伸縮性があり、厚みのバリエーションも豊富です。
今の時代のソフトシェルが知りたい
とはいえどんな歴史があろうと、今現在ソフトシェルと呼ばれているものについてもうちょっと理解を深めたいと思っている方も多いですよね(実際私もそうです)
ということでこの項ではその辺をもうちょっと考えてみます。
今ソフトシェルと呼ばれて広く出回ってるものは、超ざっくり大きく分けると2種類あります。
- アウターとして使うことがメインで作られているもの
- アウター・中間着として使えるように作られているもの
どちらの性質も併せ持ったタイプも存在しますが、いずれにせよ何を選ぶかで、大きく山での快適性は変わるので、自分のニーズに対して合うソフトシェルを知ることが大切です。
「だーかーら!そのソフトシェルがよくわからないから比べようがなくて苦労してるんじゃないか」とツッコミが入りそうなので^^;
もーちょっと具体的に話を進めます。
ソフトシェルのバリエーション
では、アウター寄りのソフトシェルと中間着としても着られるソフトシェルの特徴を荒々しいイラストと共に考えてみます。
アウターとして作られているソフトシェルの特徴
特徴1.フードがついている確率が高い
中にはフードが着脱可能なものもありますが、基本一体型が多いです。
- メリット:寒さ対策・頭の保護・雨が降った場合の一時しのぎなど
- デメリット:重ね着しにくい・収納時かさばる・強風でばたつくなど
特徴2.生地の厚みや伸縮性
アウターメインのソフトシェルはランニングに使うような極薄ナイロンでできたものからジャージのような柔らかく厚みのあるものまで様々ですが、中には伸びない素材のものもあります。
また全体にメンブレンが入っているものも多く、少しストレッチ性が悪くなる代わりに耐風・耐水性がよくなります。
- 薄いメリット:軽い・透湿性が高い・フィット感がいい・収納時コンパクト・重ね着しようと思えばできる
- 薄いデメリット:引き裂きに弱い・保温性は期待できない
- 厚いメリット:強い・暖かい・岩場でも使える
- 厚いデメリット:収納時でかい・透湿性が落ちる・重い
- 伸びないメリット:生地の薄さに対し耐風性の高いものが多い
- 伸びないデメリット:ツッパリ感・鋭利な石などに弱い
- 伸びるメリット:とにかく動きやすい
特徴3.脇下の工夫
アウター仕様のソフトシェルは脇下にベンチレーションがついていたり、そこだけ素材を切り替えてムレ感を抑える工夫がされているものが多いです。
- メリット:温湿度調整が楽
- デメリット:ジッパーのぶん重量が増す
特徴4.シルエット
アウター=中に着込むということで、中間着にすることを考えたソフトシェルより身幅やアームホールが広めに作られているものが多いです。
- メリット:中に着込める:着心地が楽
- デメリット:腰ベルトを止めた時もたつく・上に重ね着しにくい・風で少しばたつく
商品例
マムート アルティメイトフーディー, ノースフェイス フューズフォームV2, ブラックダイアモンド アルパインスタートフーディーなどなど
使用例
軽登山・登山・クライミング・バックカントリーなどなど
中間着にもしやすいソフトシェルの特徴
特徴1.前たてが長い
フード付きでも前たての長いものが多いですが、フードなしはほぼ100%首まで覆う作りにできてます。
- メリット:首元が冷えない・温度調整しやすい
- デメリット:たまに長すぎて苦しいるものがある(私だけ?笑)
特徴2.生地の厚みや伸縮性
これはさっきとほぼ違わないです。ただフードなしのものの方がメンブレンを入れない、もしくは前面だけに入れて、伸縮性を損なわないよう作られているものが多いです。
特徴3.ポケットの位置
フリース同様、中間着として使うことも考えられているソフトシェルはポケットが胸にだけついているものも少なくありません。
- メリット:重ね着中胸ポケットの方がものが取り出しやすい・アウターのポケット位置と重なって干渉し合わない・軽い
- デメリット:アウターとして使用中ちょっと不便
特徴4.ハンドゲイターの有無と袖周り
袖周りがあまりにも太めに作られていると、重ね着した時中で余った生地がもたついてしまいます。なので袖周りは細く作られたものが多いです。また着脱が素早くできる・寒さ対策のためサムホールがついたものが多いです。
- メリット:上に重ね着してもスッキリ・風が入り込みにくい
- デメリット:中に着込みづらい
特徴5.腰回りのシルエット
袖周り同様、腰回りも細身のスッキリとしたシルエットのものが多いです。
- メリット:上に重ね着したり、腰ベルトを締めてもスッキリ・下から風が舞い込みにくい・走る時に腕振りがしやすい・風のばたつきが少ない
- デメリット・中に着込みづらい・ちょっと太るとアウト^^;
商品例
モンベル クロスランナージャケット, マウンテンハードウェア スーパーチョックストンジャケット, マムート ウォールジャケット, アークテリクス ガンマLTジャケットなどなど
使用例
登山・トレイルランニング・クライミング・バックカントリーなどなど
ソフトシェルを使うメリット
※メリットでソフトシェルを洗えという意味ではございません(笑)
イラストと商品名を挙げたことで、なんとなくソフトシェルのイメージがわかっていただけたかと思います。
それと同時に出てくる疑問もあったと思います。
「結局ソフトシェルって必要なの?」Σ(・□・;)
…そうなんです。
ソフトシェルの必要性はずっと議論されていて、未だその結論は出ていません(おおげさ)
あくまで個人的な意見としては
ソフトシェルパンツは本当に伸縮性が良くて足運びがしやすく、乾きも早くて使いやすいので、どんどん普及すればいいのにと思ってます。
中間着タイプも、透湿性が非常によく、トレランや行動着としてかなり優秀なので、コンパクトにできる薄手のものはオススメです。フリースを行動着にしたら一瞬でボロボロになっちゃいますしね。
アウター・中間問わず、厚みとストレッチ性のあるソフトシェルはバックカントリーやアイスクライミングに根強い人気があります。しかしベチャ雪だと浸水する可能性があるので注意が必要です。
ただ休憩時のウインドブレーカーが欲しいのであれば、ハードシェルを羽織って風を避けることも可能なわけで、ストレッチ性を求めない静的な場面はハードシェルで代用できる部分も結構あるような気はします^^;
また新たなソフトシェルならではの発見があれば追記しますね!
まだまだ発展途中
長々とソフトシェルについて説明してきました。ここまでお付き合いいただいた方、お疲れ様です、ありがとうございますm(_ _)m
ソフトシェルというジャンルは登山用品の中では歴史が浅く、まだまだ発展途中なジャンルなので抵抗のある方も多いかもしれませんが、一度使い出したら病みつきになったよ!という感想の人がとても多かった印象があります。
また柔らかく着心地の良い素材が多いので普段着と兼用されている方も多かったです。
この先もどんどん新しい商品が開発されると思いますが、どんな工夫が凝らされたソフトシェルが出てくるのかとても楽しみですね。
それではまた次回まで!